横磁場下イジング揺らぎによる超伝導
強磁性超伝導体URhGeは強磁性と超伝導が共存する珍しい物質です。これまで見つかっている強磁性超伝導体
のなかでも、URhGeの磁場中の振る舞いは特に不思議なものとなっています。URhGeは強いイジング異方性を持ち、零磁場では強磁性磁化はc軸方向に揃います。
b軸方向に横磁場を印加していくと2T程度で零磁場下で発現していた超伝導状態は破壊されますが、さらに8Tまで磁場を強くすると再び超伝導状態が現れます。
さらに高磁場の超伝導転移温度は零磁場のものより高く、その最高値はちょうど磁化がb軸方向を向く磁場(飽和磁場hs)で実現します。
このような振る舞いを説明する為に、横磁場イジングスピンが伝導電子と結合した模型を解析し、p波の超伝導について調べました。
横飽和磁場近傍では横方向に揃った状態からスピンを反転させるマグノンの励起がソフト化し、そのスピン揺らぎを用いて、スピンが揃ったクーパー対
の線形結合の超伝導状態が安定化することがわかりました。この状態は低磁場で発現する、片方のスピンの超伝導状態と異なる状態であり、その実験的検証
が期待されます。
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