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 電子の軌道自由度が関与する相転移現象は最近の主要研究テーマの1つです。通常、電子の関与する相転移においては、電荷やスピンの自由度が長距離秩序を形成しています。伝導電子がd軌道やf軌道にある多くの強相関電子系においては、縮退したd, f軌道の波動関数の軌道自由度が秩序形成に関与する可能性があります。軌道自由度は、電子のスピン自由度とも結合して複合した秩序を形成することが期待されます。 

 スピネル型バナジウム酸化物AV2O4(A=Zn, Mg, Cd) において、このような軌道・スピンの複合秩序が形成される可能性を研究しました。これらの物質では温度の低下に伴い絶対温度50度付近で構造転移を示した後、40度付近においてスピンが秩序する磁気転移が出現します。磁性を担うバナジウムイオンにおいては3重の軌道縮退があり、この自由度を取り入れて低エネルギーの軌道とスピンの相互作用の有効モデルを導出しました。この有効モデルの解析によって軌道秩序状態が安定であることを示し、構造相転移が実際には電子軌道の相転移であることを指摘しました。

 さらに、軌道秩序が形成されたことによってスピンの間の相互作用が大きく性格を変えることを示し、このことによって初めて低温の磁気秩序相のスピンの空間配列パターンが説明できることを明らかにしました(右図参照)。   

 

 

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