磁性不純物スピンと伝導電子の交換相互作用によって現れる近藤効果、およびエキゾチックな非フェルミ液体状態は重い電子系化合物の現象を理解する上で非常に基本的かつ重要な背景となります。これまで多くの理論的不純物模型が提案され、解析されてきました。その中にお
いて、これまでその非フェルミ液体の起源について謎のままであるものにスピン3/2系での多極子近藤模型があります。なぜスピンが3/2なのかと言うと、f電子系のCe化合物においては、Ceのf電子の結晶場状態の縮退度が4である場合があり、その4つの状態を擬スピン3/2で記述することが良いことがあるからです。
我々はスピン3/2の系においてはSO(5)対称性が成り立つ場合があること
に着目し、数値計算によって得られていた結果を再現する境界のある場合の共系場理論を提案しました。通常、非フェルミ液体というと比熱が発散したりするものですが、その四極子感受率の発散にもかかわらず、
比熱は発散しないことは注目すべき点です。さらにその結果はほぼ厳密な数値繰り込み群を用いた計算でも確認することができました。
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