マグノン対凝縮の理論
対凝縮と言えば、二つの電子のクーパー対のボース凝縮として解釈される超伝導がありますが、強磁性と反強磁性相互作用が拮抗したある種の磁性体の磁場中では、素励起であるマグノンが対を形成しその対が凝縮状態になることを提案しました。モデル物質はLiCuVO4と言う物質で、スピン1/2を持つCu鎖がy方向にのびており、そのCu鎖がx方向に緩く結合しているとみなせる物質です。実験から超交換相互作用はJ1,J2,J3が重要でJ1とJ3が強磁性的であり、J2は反強磁性的なものということが示唆されています。これらの超交換相互作用を用いて、マグノン対の理論を構成し、高磁場での
相転移がどのようなものになるのかを議論しました。
まず、高磁場下でのマグノンを定義する必要があります。十分に強い磁場をかけると、下図右側のように全てのスピンは強磁性的に揃うことはすぐにわかると思います。この場合のマグノンとは、その中の一つのスピンを反転したものが結晶中を動き回る、という素励起と言う事ができます。通常、磁場を無限大から下げてくると、ある磁場においてこのマグノンが凝縮し始めます。このことは磁化が飽和磁荷から減少することを意味します。
今回のモデル物質の場合は、このマグノンの凝縮よりもマグノン対の凝縮の方が高い磁場で凝縮を始めるということを明らかにしました。後に実際に高磁場における磁化の測定からこのようなマグノン対凝縮相と思われる相が観測され(ref. arXiv:1005.5668)、その観測された磁場や磁化の傾き(dM/dH)もほぼ理論値と合致していることが確認されています。
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